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【ラノベ感想】百万回は死んだザコ/#ファミ通文庫の単行本/yononaka

🌸あらすじ🌸

ある土地のある国に伝わる英雄の名は…
死んでも何故か他の賊に転生、憑依するザコが主人公。
呆気なく死に、都度リスポーンする彼の命の価値は軽い。
繰り返しても賊にしかなれないけれど、その魂に宿る一つの想い。
胸を躍らせる英雄譚…心のままに人を救い手を差し伸べ誰かの未来を守る冒険者
その憧れに手を伸ばし、命がけで救ってみたりするのです。
そんな繰り返すザコが支え続けた英雄譚。

🌸感想🌸

名もなきザコの英雄譚…この言葉に惹かれて即決予約していたのですが、期待通りで有り期待以上の英雄譚でした!
賊として転生する。ザコでモブで噛ませ役定期な賊。そんな賊を繰り返す。
賊世間は力による上下関係…。自由気ままに犯罪ぐらしともいかず、生きる為に力に伏して底辺は底辺のまま。そんな繰り返しで心が曇ること無く、憧れに手を伸ばして、自分は死なないからまたリスポーン出来るからと割り切り僅かな力で手を差し伸べる英雄に魅せられる。
一度死ぬことで新たな賊に憑依転生する…という事で視点は変わるけれども連続する記憶の中で本来であれば絶たれてしまうであろう意志や遺志が限りの中では連続し継がれ、やがて成る物語の流れに圧倒されますね。
例えばある人を救いその結果がこの物語の歴史に大きな救いをもたらしていく。
何もかもに手を差し伸べ、全てを拾い上げる英雄には成れないけれど、目の前にいる助けを求める誰かをすくい上げることで、より大きな結果へとたどり着く。
目の前で喪う事を後悔と感じ、救いを求める人を救いたいと想う優しさが有り、自由で意志を通す冒険者に憧れる煌めきがあるからこそ紡がれた英雄譚とザコが支えた史。
御馳走でした。
絵師であり、この小説が書ける。二足の草鞋が凄いですね。

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🌸ネタバレ感想🌸

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思っていた以上に熱い物語で心震えましたし、グラムの軽い口調というのが読み心地を軽くしていて楽しく読めた。
再利用と10回の記憶連続リスポーン。彼の超能力が序盤で明かされたあとに、アーシャの遺志を再利用し、ミグナードを葬り送る回収が熱かったな…アーシャ生きてて欲しかった(泣)
最初の継暦2年の時のトランキリカのリゼルカさんを救い、それがヘンエリカとリゼルカに分裂、継暦150年でまたこの国の存亡をかけた戦いに頭を突っ込んでいく…ということで表舞台に名前も彼のしたことも残るけど、それらの英雄譚を正しく全部観測し、心に刻みつけられる観測者は私達だけなんですよね…だって彼自身ですら10を超えたら覚えていられないのだから。エピソード記憶が10回保持を超えると保持できなくなる。
少なくとも2年から150年って事で時が経過している。
この事実実はとんでもなく想像を絶する恐ろしさを感じたのですよね…。
だって150の0で記憶ないわけですよね…彼受け入れているけど普通に考えて狂う。
最早賊という概念が冒険者に憧れ歪み変質したのではないか…みたいな見当外れな事も考え出してしまう程にこの繰り返しの恐ろしさを刻まれた。何かを成しても記憶はなくなり、それが好転しているかも分からず、目を覚ますと底のザコの賊である。
例えば今回はリゼルカという国を、リーゼという少女を何度も助けて、グラムという偶然の英雄の名のもとにこの国を幸いに導いた訳で御座いますけれども…記憶なくて、また賊なんだよ?彼への救いみたいなのがなんかないんだ…無くても明るくマシな人生をと生きる彼…ちょっとこの現実に僕の心のほうが先に折れそうだったな…
いうなればヒロインを助けた英雄は自分の全てと引き換えにその一つの奇跡を成し遂げた…そんな感じ。リゼルカの国に英雄として名は残るであろう。彼に助けられた人たちは皆グラムという英雄の生き様と不思議な一致に首を傾げながら、それでも語り継ぐだろう。だけど、彼は何も覚えては居ない。また何処かで賊として生まれ、救いを求める誰かに気まぐれに後悔のないように手を差し伸べるのだろう。
その切なさが、寂寞が胸に満ちてる…だけど確かに成し遂げた満足がある。
無限に思われる限りあるリスポーン。命を何度も何度も差し出して、それでも笑顔で願うは誰かの未来で誰かが幸である事。
投げやりじゃないんだよな…記憶を喪うって分かっていてそれでも誰かを救えないことを後悔だと感じ、誰かを救う為に己の軽い命を気安く差し出す生き急ぎ野郎。お前のことを忘れないし、刻んで愛してやるってなもんですよ。
どうせあれだろ?148の空白の中でお前さん沢山救ってんでしょ?どうせ覚えてないけど、それでも助けてきたんでしょ?冒険者になるって夢を一度は叶えられたのに、その夢を叶えた人生ですら、誰かを救うために投げ出せてしまうんでしょ?
きっと彼…壊れてるんだろうなとも思うんだ…でもだから、自分の望みに指をかけて新しい人生を歩みだしても、誰かが生きることを優先するのが素晴らしく英雄なんだよね…。続くと分かる遺志でも有限で、願いが叶ったという自分の幸いを、ためらうこと無く手放せるのは並大抵じゃない。力はザコなのかもしれないけど、お前様の心の強さは間違無く英雄。個人的にはイケオジハイセンさんが好みドンピシャでしたし、リーゼやカイリ、ハイセンさんも含め彼の偉業に救われ彼の想いを繋いでくれる人達が居ることが幸ですね。どうかまた巡り会えますように。繰り返す彼のこの先が、永遠では有りませんようにと願ってしまうのは傲慢かな…。英雄の未来に幸多からんことを。